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あらすじ

 人間と鬼、姿形のまったく異なる二つの種族が存在した古の時代。互いに疑心を抱いていた二つの種族は、強大な力の宿った角を有する鬼人と、人間でありながら鬼をも凌駕する力を備えた少数の『神臨人テレシア』とが互いに不可侵を誓い合うことで、薄氷の上に平和を保っていた。
 しかし、ある時代にあって、人間の国に『神臨人テレシア』が同時期に多く誕生したことで両者の間には緊張が走り、人間側の一代前の王が、鬼人との国境にほど近い場所に巨大な城塞を築城する計画を打ち立てたことで、仮初の平和は瓦解した。
 鬼人の若き武将アルラスは、親友であり、主でもある鬼人王オーゼンとともに、鬼人が生き残る道を模索するが、『神臨人テレシア』を多く抱えたウル王国の前に鬼人は徐々に追い詰められていく。消えゆく種族の未来のため、アルラスが決断したことは‥‥。

登場人物

アルラス
鬼人が誇る最強の精兵、『阿修羅アシュラ』を率いる若き武将。十年前の鬼寇にも参加しており、多くの『神臨人テレシア』を葬ったことで『鬼神』の異名を持つ。
シャナ
アルラスの妻。鬼人王オーゼンの妹で、彼の意向によって恋愛結婚が許された。腹にアルラスの子を身籠っている。
オーゼン
鬼人を統べる若き『大王おおきみ』であり、アルラスの無二の親友。父である先王が七年前に逝去したことで王位を継承した。脅威を増していくウル王国に対して、鬼人が生き残る道を求めてもがいている。
バトゥ
アルラスに仕え、『阿修羅アシュラ』の副将を担う若き猛将。十年前の戦乱に巻き込まれ、家族を亡くして孤児となっていたところをアルラスに救われた。以来アルラスに忠誠を誓い、ガンフとともにアルラスを支える。
ガンフ
アルラスに仕える老将であり、『阿修羅アシュラ』のもう一人の副将。元々は『阿修羅アシュラ』の先代の将軍であるアルラスの父に仕えており、十年前の『鬼冦』にも副将として参加している。
ローハン
ハサンの西の地に暮らす部族の若き部族長。鬼人領域とウル王国の国境付近に生きる部族である為、ウル王国に対して大きな恐怖を感じている。
カジェ
鬼人の子ども。
オセ
アルラスの伝書烏。脚が3本ある。
エラルド・ルーデウス
王国最強と称される『神臨人テレシア』。十年前の『鬼冦』時、戦いのたびにその純白の外套を血で染め上げたことから『白朱の悪魔』と呼ばれ、敵からも味方からも恐れられている。
レイド・ジン
エラルドと並んで王国最強との呼び声高い『神臨人テレシア』。国王直轄の兵士の証である緋色の外套を授かり、『緋色の超人』という異名を持つ。恋人との約束で、戦においてただの一人も殺さないという誓いを立てている。
シア
レイドの恋人。胸に病を抱えており、村から出ることができない。自分のためにレイドが戦うことをよく思っていない。
セオドア・ウル
第21代ウル王国国王。『神臨人テレシア』としての力はなく、武力を持たないため宮廷内での求心力と立場は弱い。
ジード・ルーデウス
エラルドの養父であり、王国議会筆頭議員。エラルドをはじめ、多くの『神臨人テレシア』を取り込んだことで宮廷内で絶大な権力を握っている。

用語・世界観

鬼人
ハサンの地に生きる種族。人間とよく似た姿をしているが、四肢の先や鋭い牙、そして額の鋭い角など、古の時代の姿の名残がある。額の角にはかつての鬼の力が宿っており、それを媒体として巨大な鬼の姿へと変化することができる。そんな鬼人の力そのものである角を自分たちの誇りとしており、命よりも大切なものとして扱うが、その力は時を経るごとに弱まり続けている。
神臨人テレシア
人間の中に極々稀に誕生する存在。人間でありながら、鬼人をはるかに凌駕する力を持ち、永きにわたって人間の守護者として鬼人と渡り合ってきた。
阿修羅アシュラ
アルラスが率いる鬼人王直轄の精鋭軍。力に秀でた鬼人の中でも特に武勇に優れた選りすぐりの勇士たちによって構成された鬼人界最強の戦士団。鬼人の矛であり、盾。
クリルタイ
鬼人界における最高意思決定機関。大王の召集によってハサンの有力部族の長が集まり、戦や法令についてを議題とした会議を行う。
エルシオン騎士団
王国議会筆頭議員であるジード・ルーデウスの私有部隊。エラルドを団長として多くの『神臨人テレシア』が所属しており、白一色の外套を正装としている。
鬼寇きこう
十年前、ダレン要塞の建造を受けた鬼人によるウル王国内への侵攻。戦いは一年近く続いたが、前ウル国王の逝去によって揺らぎが生じたウル王国が和平を持ちかけ、これが成立したことで鬼冦は終戦となった。結果的に鬼人側は当時建造途中であったダレン要塞の破壊には成功したが、当時の『阿修羅アシュラ』の頭領をはじめ、多大な犠牲を出した。

地名

イシュタル亜大陸
東の果てにある巨大な亜大陸地方。南北を巨大なテムルン山脈が貫いており、山脈を隔てた東西で文化や地理がまったく異なっている。
ハサンの大地
人間の中に極々稀に誕生する存在。鬼人をはるかに凌駕する力を持ち、永い時にわたって人間の守護者として鬼人と渡り合ってきた。
ハイト
鬼人を束ねる『大王』が治める直轄領であり、鬼人界の首都。アスモ大河を自然の堀とした防衛機構を備える。
アスモ大河
ハサンの地の北方を流れる大河。物流の要として、各都市間の間で利用されている。
チャムカ大河
ハサンの地の南方を流れる大河。いくつもの支流に分かれ、農業の盛んな南部における重要な水源となっている。
ウル王国
ウル王家が西の地に築いた人間の王国。王家に生まれた『神臨人(テレシア)』の王族が代々国を治めてきた。国土の半分以上を乾燥した平原が占める。
ダレン要塞
ウル王国の前王によって建造が計画された、鬼人領域との非武装地帯内に位置する巨大な城塞。十年前の鬼寇の直接の原因となった。前王の死により建造計画は長らく中断されていたが、再び建造を進めることが決定された。
王都アリア
ウル王国の王都。
テムルン山脈
大地を南北につらぬく巨大な山脈。この山脈が自然の長城となったことで、鬼人と人間は互いに敵意を抱き合いつつも、これまで大規模に衝突することはなかった。
サザン街道
かつて人間と鬼人の間で交易を行うために整備されたハサンの地とウル王国とを繋ぐ長大な街道。しかし、ダレン要塞の建築計画が立てられて以来、そのような交流は激減した。
テルク峠
テムルン山脈における交通の要衝。険しい山脈において唯一、大群が東西を移動できる回廊であるため、鬼人と人間の間でこの場所をめぐる争いが絶えなかったが、十年前の鬼寇によって現在は鬼人領となった。